焦らないで、だいじょうぶ。
悩まないで、だいじょうぶ。
子どもをよく見ていれば、だいじょうぶ。
子どもは子どもらしいのがいちばんよ。
(はじめに より)
10月14日に89歳でこの世を去られた、中川李枝子さん。
「いやいやえん」の初版は1962年、「ぐりとぐら」のはじめてのこどものともでの発表は1963年。
いずれも60年以上も世代を超えて愛されている本たちです。
小さい頃何度も読んだ「ぐりとぐら」に「いやいやえん」、「ももいろのきりん」・・、
そして小学校で教科書に載っていた「くじらぐも」。
中川李枝子さんの本ってずっとそばにあって、
なんだかあったかいお母さんみたい、
そんな風に思うのはきっと私だけではないはず。
日本中の子どもたち、
そして昔子どもだった大人たちの心を、
たのしいお話を物語りながら育ててくれた方だと思います。
今回ご紹介する本は保母さんでもあった中川李枝子さんが長年子どもたちと共に過ごした経験をもとに綴られた、
お母さんやお父さんのために書かれた一冊です。
わたしが初めて手に取って読んだのは、娘がお腹にいたときのこと。
これからはじまる子育てにどきどきしながら、不安もいっぱいでした。
幼児期のお話がメインなのですが、子育てって楽しそう、子どもってやっぱりおもしろい、とどきどきの気持ちにわくわくがやってきて、
そして何より自信をもって大丈夫と背中を押されているような気持ちで、心があたたかくなったことを覚えています。
そして3歳の娘と暮らす今、中川さんの言葉たちはより一層わたしの心に沁みるのです。
子どもってそうそう、そうだよね、
そして、お母さんってそうなんだよね。
中川さんがいかに子どもたち、お母さんの気持ちを理解し、そして絵本や児童文学に重きをおかれていたかが分かります。
わたしの気に入っているお話を本文から少し・・
子ども同士は誠意が通じるのです。
子ども独自の、大人とは違う気持ちのよさがあります。
損得勘定をしないし、手抜きやいいふりもしないし、見栄も張りません。
けっこうプライドもあって、恥も知っているし、紳士協定などもきちんとやっています。
本当にいつも全力で生きていますから、
私は子どもを見ていて、自分がもう一度子どもになりたいとは思いませんでした。
大人はうそをつけるし、いい加減なことも言えるし、ごまかすこともできるし、
なんて気楽でしょう。
だから子どもは偉いなあといつも感心しているのです。
(1章 お母さんが知らない、保育園での子どもたち より)私はいつも、子どもと一緒に絵本を読みましょうといっています。
読み聞かせという言葉には「読んで聞かせる」「言って聞かせる」という感じがあって好きになれない。
そこで「子供と一緒に読む」と表現します。「もう一冊、もう一冊」には、そのうち必ず卒業の日がやってきます。
子どもといっしょに物語や絵本を楽しむ、私にとってこれ以上幸せなことはない、至福の時でした。
(4章 本は子どもと一緒に読むもの より)
子育てのやり方は時代とともに変わってゆきますし、子どもたちを取り巻く環境も大きく変化しています。
こちらの本の中にも、例えば子どもを叱る場面など、現代のやり方とは違うなあと感じるところがあります。
このタイトルの「問題児」という表現でさえ今ではよくないという声が聞こえてきそうです。
しかし、今も昔も子どもたちの心を育てる上で大切なものは変わらないと思います。
十七年間まっすぐに子どもたちに向き合い、その後も子どもたちの今や未来を考えてこられた中川さんの言葉は、母親として心にずっと大事にもっておきたいものばかりです。
数々の絵本をともに生み出してこられた、実の妹である山脇百合子さんの挿絵がまたあたたかく、読んでいて居心地がいいところも素敵なポイント。
最後にもうひとつ、お母さんとして勇気をもらえる言葉を。
子育て真っ最中のお母さんが、私にはうらやましくてたまりません。
なんて幸せな人だろうと思います。
子育てに追われておしゃれもできない、社会から取り残されているなどとぼやいていますが、そんなことはありません。
あなたはまぶしいほど輝いています。
世の中のすべてのことが我が子の将来にかかってくるのですから、いま社会の先端に立っているのはお母さんたちです。
(5章 いいお母さんって、どんなお母さん? より)
作品について
題名:子どもはみんな問題児。
作者:中川 李枝子 著
出版社:新潮社
おすすめの読書シーン:育児 幼児期育児 幼稚園や保育園への入園 妊娠中に
おすすめの年齢:大人