いたいいたい、とんでいけ
転んで膝に擦り傷をつくった時、頭をこつんとぶつけた時、初めての注射。
娘が生まれてから、何度も唱えた言葉です。
私も幼い頃けがをした時はいつだって、母や祖母が「いたいいたい、とんでいけー」と慰めてくれたものでした。
きっと誰でも優しい思い出とともに記憶している言葉ではないかと思います。
さて、愛情たっぷりのおまじないでとばされた「いたいいたい」は、どこまでいったのでしょうか。
つづきはこの松谷みよ子さんの素敵なわらべうた絵本で。
いたいいたいはとんでいけ
松谷みよ子 作 佐野洋子 絵
いたい いたいは とんでいけ
ちちんぷいぷい とんでいけ
むこうの おやまへ とんでいけ
むこうの おやまは らくらくやまで
うさぎが いっぴき ねてござる
まずここで心を掴まれます。
らくらくやま!
なんてのんびりとして幸せな響き。
痛くて悲しくてぽろぽろ涙を引き起こした「いたいいたい」は、このらくらくやまで、うさぎにどうにかしてもらいましょう。
いたい いたいは まるめて なげて
ぼうで たたいて ふわふわ のばし
まくらにしょ ふとんにしょ
くっしょんにしょ
ああ らくらく
ああ らくらく
とんでいった「いたいいたい」はなんと、うさぎが全部、ふわふわの枕やお布団にしてくれました。
気持ち良さそうにお布団に入っているうさぎの満足気な表情を見ると、心もふんわり軽くなります。
ちょっとおすまし顔の女の子、泣き顔がなかなかリアルなのも佐野洋子さんらしくて大好きです。
筆の柔らかいタッチがまた、このわらべうたになんともぴったり。
この絵本を読んでから、娘にはいつも「いたいいたい、とんでいけー」の後に、「あっ、今うさぎさんがとんとんのばして、ふわふわお布団にしてくれてるね」と話しています。
悲しい気持ちが、柔らかくて優しいものになる安心感を娘に届けてくれました。
傷と心に効くおまじないの一冊です。
作品について
題名:いたい いたいは とんでいけ
作者:松谷みよ子 作 佐野洋子 絵
出版社:偕成社
おすすめの読み聞かせシーン:けがをした日 お友達とケンカをした日
おすすめの年齢:0歳から3歳
(絵本は赤ちゃんから大人まで読む年齢に決まりはないので、あくまでもご参考程度に)