お互いの違いを認め合い、尊重する。
多様性の時代と言われる今でも、簡単なはずのことがどうしてかとても難しい世の中ではないでしょうか。
アメリカに住む日本人としても、自分たちがマイノリティであることを意識する瞬間は少なくありません。
まだ2歳の娘の世界でも、家と外では話されている言葉が違う、自分や両親とは違う髪の色や目の色のお友達がいる、といったことを感じる場面が多くあります。
そんな近頃の娘に読んであげたい絵本、とあるふたりの秋の出来事のお話です。
おおきいトンとちいさいポン
いわむら かずお 作
おおきいのは いいなあ。
ちいさいのは いいなあ。
おおきいほうが いいに きまってる。
ちいさいほうが いいに きまってる。
秋の野原を歩くのは、背の高いトンと、背の低いポン。
トンは大きいのが一番と思ってる、だって高いところになってる柿に手が届くし、深い水たまりではしっぽもズボンも濡れないし。
ポンにとっては小さいのが一番、だって木の枝に頭をぶつけずに済むし、雨よけの葉っぱは小さい体をすっぽり包んでくれる。
そう信じていたトンとポンですが、秋の風がふたりの帽子を遠くに飛ばしてしまい‥。
この小さなハプニングがふたりに大切なことを気付かせてくれます。
ちいさいのも いいね。
おおきいのも いいね。
ここには何も難しいことはなくて、一緒に助け合うと、素直に「あ、おおきいのもいいもんだな」「ちいさいのもいいんだね」そういう気持ちになれるんだと、心はすっきり、温かいものに包まれます。
「みんなちがってみんないい」
金子みすゞさんの「私と小鳥と鈴と」に登場する一節が心にふわり。
ふたりを包み込む秋の風景と一緒に飛んでいる小さなトンボ、いわむら かずおさんの優しい絵が、大切なことをより自然にすっと心に届けてくれます。
絵本から秋の心地良い日差しを感じながら読み終えると、きっと人に優しくしたくなる、そんな一冊でした。
作品について
題名:おおきいトンとちいさいポン
作者:いわむら かずお 作
出版社:偕成社
おすすめの読み聞かせシーン:秋 新学期の前
おすすめの年齢:2歳から
(絵本は赤ちゃんから大人まで読む年齢に決まりはないので、あくまでもご参考程度に)