「おなべ おなべ にえたかな?」
みんなは おなべに ききました。
すると おなべは、
「コト コト コト
にえたか どうだか
たべてみよ コト」
と いいました。
こいでやすこさんの描くきつねのきっこシリーズ、
こちらはぽかぽか春のお味のするおいしい絵本。
気持ちのいい春の日、きつねのきっこはたんぽぽを摘んで、山向こうのおおばあちゃんのところへ。
途中でいたちのちいとにいもたんぽぽを手に、きっこについていきます。
おおばあちゃんはちょうど、お庭でスープをことこと煮ているところでした。
そこへかあさんからすが飛んできて、こがらすののどにささったほねを取りにきてほしいと頼みます。
おおばあちゃんは、なんでもなおせる山のお医者さんなのです。
不在のおおばあちゃんのかわりにスープの番をすることとなった3匹。
味見を繰り返し、塩とこしょう、バターも追加‥
ついにおいしいお味にたどり着きますが‥
「うーん、あまくて とろけるようだ」
「ああ おいしい。 もう いっぱい」
「どれ どれ、ぼくにも
もう いっぱい」
もう いっぱい もう いっぱいと、
みんなで あじみを したので
きが つくと、
おなべの なかは からっぽです。
さあ大変、おおばあちゃんが帰ってくるまでに、3匹はまたおいしいスープをつくれるのでしょうか。
春の訪れっていろいろなところから感じることができます。
花が咲き始めた地面に、いそがしく飛び回るみつばちやちょうちょ、
少し柔らかくてでもまだちょっと涼しい風、お日様の光。
このお話では、春がたっぷりつまったおいしいスープ。
あたたかい日差しが降り注ぐ春の山を背景に、コトコトと煮えるスープの美味しそうな色、においが漂ってきそうな湯気、そして味見をしたみんなの満足げな表情。
読むだけでこちらもしあわせな気持ちになります。
このお話でわたしがとても気に入っているところは、3匹と一緒に味見をしようと集まってくる山の小さな仲間たち。
リスたちはどんぐりの帽子を、アリたちは葉っぱを、味見用のお椀にしようと持ってきます。
そして、各々もぐらやいもむし、ちょうちょうたちと分け合うのです。
その細かな描写が、彼らの生活ぶりを想像させてくれます。
また、春の野花がたくさん描かれているところにも注目です。
春のおいしさとしあわせがぎゅっとつまった一冊でした。
作品について
題名:おなべ おなべ にえたかな?
作者:こいで やすこ 作
出版社:福音館書店
おすすめの読書シーン:春 タンポポ摘み ピクニック スープ作り
おすすめの年齢:3歳~
(絵本は赤ちゃんから大人まで読む年齢に決まりはないので、あくまでもご参考程度に)