もりのひなまつり


ねずみばあさんは おおきな こえで 
てがみを よみました。
すると、
「まいりましょう」「まいりましょう」
「もりのひなまつりをいたしましょう」
と くぐもった こえがしました。

こえは おひなさまが はいっている
おおきな はこのなかから きこえました。

福島県出身の絵本作家、こいでやすこさんの描いた、動物たちのひな祭り物語。

子供の頃に遊びまわった福島の川、野や山、豊かな自然がこいでやすこさんの作品の源流だったそうです。

「もりのひなまつり」は生家の天井裏に住んでいたねずみ達から着想を得て生まれた絵本。

森の近く、とある家の蔵に住むねずみばあさん。
春も間近なある朝、ねずみばあさんのもとへ、山鳩の郵便屋さんが手紙を運んできます。
手紙は森の野ねずみこども会から。

そのお手紙、野ねずみ子ども会は森でひな祭りをひらきたいので、ねずみばあさんのおうちのお雛様を森に連れ出してほしいというお願いでした。

「だいじょうぶかしらねえ、
うちの だいじな おひなさまを
もりの ひなまつりに おつれしても」
ねずみばあさんがいうと、

「だいじょうぶですとも」
「うちのひとが ひなまつりの かざりつけをするまえに かえってくれば いいのですから」
はこから だしてもらった おひなさまは
うれしそうに いいました。

少し心配性のねずみばあさんでしたが、お雛様ご一行を連れ森へ。

森では五人囃子の笛や太鼓にあわせて、歌って踊るお雛様とねずみ達、噂を聞きつけた森の動物たちも一緒です。
甘酒もふるまわれ、大いに楽しんだ一同ですが、夕方になりあたりは暗くなり、冷たい風が‥

帰り道には雪まで降り始め、蔵まで帰り着くとお雛様たちはすっかり汚れてしまいました。

お雛様は無事にきれいな姿へ戻ることができるのでしょうか?

美しいお雛様はチャーミングでなんだか雅な口調もとても可愛らしく、ねずみばあさんには祖母を思い出させてくれるような頼もしさと温かさが。
森の動物たちからは、せっせと子育てに励む様子が見て取れます。

お話の中で登場人物の個性が垣間見えるのは、ストーリーだけではなく、細かに描かれた調度品や持ち物にも。

こいでやすこさんがいかに物語の中に住む彼らの世界を大切に綿密に描いているのかが分かります。

桃の節句が間近となり、よくこの絵本が読み聞かせ時間に登場する我が家。
娘は自分のお雛様も森へ出かけてゆくのかもと心躍らせてお話を聞いてくれます。

どこか遠くの森から聞こえるお囃子に耳を澄ませながら、甘酒をいただきたい気持ちになる一冊です。

作品について
題名:もりのひなまつり
作者:こいで やすこ 作
出版社:福音館書店
おすすめの読書シーン:ひな祭り 春
おすすめの年齢:3歳〜
(絵本は赤ちゃんから大人まで読む年齢に決まりはないので、あくまでもご参考程度に)

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