急行「北極号」 The Polar Express

夜もふけてから、
もの音が聞こえてきたが、
それは鈴の音じゃなかった。
外から聞こえてきたのは、
しゅうっという蒸気の音と、
金属がきいいっときしむ音だった。
窓の外を見ると、なんとうちの前に、
汽車がぴたりととまっていた。

オールズバーグのクリスマスの名作、
「The Polar Express」
翻訳は村上春樹。
幻想的な美しさ、そして少しの不安と緊張感、
夢の中の出来事のようなオールズバーグの絵本。
この一冊を含め、その多くを村上春樹さんが翻訳しています。
独特の世界観をそこなわない、その翻訳も魅力のひとつ。

「やあ、君も来るのかい?」
「どこに行くんですか?」
とぼくはたずねてみた。
「どこって、もちろん北極点さ」
という答えがかえってきた。
「これは急行『北極号』だもの」
車掌がさしだした手をつかむと、
ぼくは列車の中にひっぱりあげられた。

なんて心躍る展開でしょう。

列車内でふるまわれるのは、
「雪のように真っ白なヌガーがまん中にはいったキャンディー」
「チョコレート・バーを溶かしたみたいに、とろりと濃くて香ばしいココア」
パジャマやナイトガウンに身を包んだ子どもたちは、みんなでクリスマス・キャロルを歌います。

大人になった今でも子どもの姿に戻って乗ってみたい、急行「北極号」。
山を越え、大氷原を越え、一路北極点へ。

そこで待っているクリスマスの夜の魔法にかかったような出来事。

描かれている絵から伝わる、夜の山々の静けさ、しんしんと降る雪、鳴り響く鈴の音、歓声。
見事な構図と、その瞬間に時が止まり、全てのものを画面に閉じ込めたような世界。
その美しさに息を呑みます。

オールズバーグの魅力がたっぷり詰まったクリスマスの傑作絵本。
クリスマスの夜の読書にふさわしい一冊です。

作品について
題名:急行「北極号」
作者:C.V.オールズバーグ 作 村上 春樹 訳
出版社:あすなろ書房
おすすめの読み聞かせシーン:クリスマス ホリデーシーズン おやすみ前
おすすめの年齢:小学生〜
(絵本は赤ちゃんから大人まで読む年齢に決まりはないので、あくまでもご参考程度に)

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