たなばた

むかし、あまのがわの ひがしに、
しちにんの てんにょが 
おりました。

みんな はたおりが じょうずで、
うつくしい くもを
おっていました。


なかでも 
すえむすめの おりひめは、
いちばん じょうずでした。

七月七日。
七夕の夜にふさわしい、
幻想的で美しい、夢の中にいるような絵本。

中国文学、民族学者であった君島久子さんが再話された、中国の七夕説話のおはなしです。

昔、天の川の東には七人の天女たちが住んでおり、西は人間が住む世界でした。

そこに年老いた牛と暮らしていた一人の牛飼い。
ある時、突然牛がものを言い、
天女たちが天の川で水浴びをする間に、
織姫の着物を隠してしまうようにと助言します。

その通りに、美しい羽のような着物を隠してしまった牛飼い。

「どうか わたしの つまに
なってください。
そうすれば、この きものを
おかえしします」
と うしかいが たのみました。

おりひめは とうとう、
うしかいの つまに なりました。

やがて、
おとこのこと おんなのこが 
うまれました。

おやこは、なかよく しあわせに
くらしていました。


けれども、そのことが
てんの おうぼさまに しられて
しまいました。

おうぼさまは おこって、
おりひめを つれもどすために、
てんの つかいを だしました。

おりひめは、
うしかいや こどもたちと、 
なきなき わかれをつげ、
てんのつかいに つれられて
てんへかえっていきました。

「おうぼさま」というのは、中国神話に登場する女性の神、西王母。
牛飼いと織姫の結婚を認めません。

うしかいは、
たいそう かなしみました。
そして すぐに、
たけのかごに こどもを いれて
かつぐと、
おりひめのあとを
おいかけました。

天の川を渡り、川向こうの天まで織姫を追いかけようとした牛飼いですが、
天の川まで来たときに、王母さまが天の川を、たかくたかく、空のかなたまで引き上げてしまいます。

中国の説話では、このときから天界、そして天の川は空の上にあるのですね。

しかし諦めることなく、牛の力も借りて、また織姫を目指して空へ上る、牛飼いと子どもたち。

切なく美しい愛の物語です。


その物語を彩るのは、童画家初山滋さんの淡く儚げで、言葉では言い尽くせないような美しい絵。

ゆらゆらと揺れているような天の川の水面。天女たちの織る、紫や桃色に霞のかかった上等の染めの着物のような雲。細く美しい蔦の植物のように描かれる天の川から柄杓で汲み上げられる水。


それは夜空をめぐるおはなしにあまりにふさわしく、うっとりと見入ってしまいます。

また、小さなところですが、文章の添えられ方が素敵で、流れるように文字が並んでいるページもあり、文字の色合いも少し淡く、絵の世界観に溶け込んでいるのです。

ひとつの芸術作品のような絵本、
大人のわたしも読みながら心が躍りますし、子どもたちにぜひ迷い込んでもらいたい物語です。

3歳の娘にも、もうすぐやってくる七夕のことを伝えたく、この頃は寝る前の定番絵本のひとつになっています。

少し彼女には難しいお話かなと思っていましたが、娘は興味津々で素直に物語を受けとめ、読んだ後はたくさん「なんでなんで?」がでてくるところを見ていると、子どもは本当にまっすぐで、大人が想像できるよりもずっとたくさんのことを吸収できるんだなあと感じます。


昔話ならではの美しい日本語の語り口調、普段なかなか使わない、「ひしゃく」や「かんざし」などの言葉たちも娘におはなしとともに聞かせることが嬉しく、わたし自身も昔話の語り手のような口調で読むのが楽しい読み聞かせの時間です。

七夕の季節に、夜空に輝く天の川に思いを馳せて読みたい、美しい一冊でした。

これを みていた おうぼさまは、
かわいそうになりました。

そして いちねんに いちど、
まいとし しちがつなのかに、

かささぎが かける
はしを わたって、
おりひめと あうことを
おゆるしに なりました。

作品について
題名:たなばた
作者:君島久子 再話  初山滋 画
出版社:福音館書店
おすすめの読書シーン:夏、七夕、夕暮れ時、寝る前の読み聞かせに
おすすめの年齢:3歳~
(絵本は赤ちゃんから大人まで読む年齢に決まりはないので、あくまでもご参考程度に)

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