
雪の日は、いつもびっくりするほどしずかです。
雪があらゆる音をすいとって、地上を白い静謐でみたします。
江國香織 あとがきより
「天使のクリスマス」
しんしんと雪の降るクリスマスイブ、
静かな夜の出来事を描く、文字のない絵本。
そしてまえがきには、
この本を、えんとつのない家にすむ
子どもたちに贈ります。
とあります。
物語はクリスマスイブの晩、女の子がサンタクロースへ欲しいプレゼントの小さなリストと靴下を準備し、パパ、ママとキスをして眠りにつくところからはじまります。
そこへそっと窓のカーテンの隙間から姿を現す、小さな女の子の守護天使。
女の子のリストに目を通すと、大事にそれを白いドレスのひもにはさみこみ、階段の下へ。
今晩、彼女の役目は空からやってくるあのひとを呼ぶことです。
文字のない物語は全部で140枚もの絵で構成されており、言葉のない静けさの中での美しい絵が、より一層温度や気配、物音をありありと届けてくれます。
仲間の天使たちとともにクリスマスツリーのキャンドルを手に、夜の雪道を照らす守護天使。
それを目印にトナカイたちの引くそりに乗り、サンタクロースが空から降り立ちます。
あたたかなキャンドルの炎と雪景色のコントラスト、そして空からふわりと降り立つサンタクロースに聞こえてきそうな鈴の音。
空から見下ろすその美しい情景にはしずかに幸福のため息をついてしまいます。
サンタクロースが眠っている女の子のそばでプレゼントを準備するシーンではハラハラドキドキする瞬間も。
一瞬の出来事は言葉なしの臨場感あふれる表情やしぐさで巧みに描かれており、物語の世界に引き込まれます。
そしてもうひとつ素敵なのは、最後のシーン。
大仕事を終えた守護天使が、女の子の部屋の窓から飛び立ちます。
彼女が飛んでゆく先をみて、読者はこの天使が一般的な天使ではなく、女の子を守り導く守護天使だということが分かるのです。
親子で静かにこの世界に浸っても、少しお話を加えながら読み聞かせしても、
また、大人だけでゆっくり楽しんでも、
文字がない分受け取り方や読み方も様々です。
静かなクリスマスの夜の読書にぴったりの美しい一冊でした。
作品について
題名:天使のクリスマス
(原題:On Christmas Eve)
作者:ピーター・コリントン 作
江國 香織 あとがき
出版社:ほるぷ出版
おすすめの読書シーン:クリスマス、冬、雪の夜
おすすめの年齢:3歳~
(絵本は赤ちゃんから大人まで読む年齢に決まりはないので、あくまでもご参考程度に)